AME20181123B004_TP_V4


159: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:34:08 ID:rnO
ほないくで

これは僕が小学六年生の時の話です。
僕の父は車で旅行するのが好きでよく一人で他県まで行っていました。
しかしそういった旅行をするときには決まって父は家族を連れていこうとしませんでした。
というのも母が車で旅行することに対してあまり歓迎的ではなかったからです。
昔は父に付き合っていたそうなのですが、ある日をきっかけに旅行に行くことに激しい拒否反応を示すようになったそうです。
だから、その時父が「家族全員で〇〇県まで行かない?」と提案した時も母は断固として拒否しました。

161: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:34:46 ID:rnO
母が同意してくれることに殆ど期待していなかった父はやっぱりと言うような表情をした後、
「今年も一人で行くかぁ」
と言ったので僕は慌てて
「僕もついて行きたい」
と言いました。
なぜ、父の車旅に付き合おうと思ったかと言うと、ある友人の影響が小学六年生の僕に大きく作用していました。
その友人は家がとても裕福で、夏休みはよくリゾート地に旅行していました。
彼はそのことを夏休み明けの教室でクラスメイト達に自慢し、クラスの話題をかっさらうのが風物詩となっていました。

163: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:35:08 ID:rnO
対して、僕は夏休みはもっぱら地元で過ごすのみで遠出も、盆に隣町にある実家に訪れるぐらいでした。
父について行けばその友人のようにクラスメイトに自慢出来ると思った僕は父に同行を願い出たのです。
思いもよらない所から助け舟がでた父はガッカリしたような顔から一転、満面の笑みを浮かべ
「そうか!じゃあ二人で行こう」
と、その年の夏は二人で車旅になりました。

164: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:36:06 ID:rnO
当日は朝の5時から家を出て、5時間ほど車内で景色を見るだけの時間を過ごしました。
正直、この時父について行ったことに後悔していました。
当時はスマホはおろか、携帯ゲームもなかった時代ですから、唯一の暇つぶしと言えばカーステレオから流れるローカルラジオのみでした。
しかし、そんな退屈な時間から一転し、午後はとても楽しい時間を過ごしました。
父と二人で釣りをしたのです。
父が連れてて言ってくれたのはそこそこ大きな釣り堀で、夏休みということもありかなり賑わっていました。
初めての川釣りで、わからないことも沢山あったのですが、優しい父は一つ一つ付き合ってくれ、僕は釣りが好きになりました。
これは今でもいい思い出で、釣りには今でも父とたまに行っています。

165: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:36:38 ID:rnO
そのような感じで楽しい一時を終え、夜がやって来ました。
夜は車内泊です。
車内泊と言っても父の車はそこまで大きいものでは無いので、寝る場所も椅子を倒してそれをベッド代わりする形でした。
ただ、そういった不便も小学生男子からすればどこかワクワクする要素になりえるのか、すんなりと受け入れることができました。

166: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:37:09 ID:rnO
「今日は楽しかったか?」
父が笑顔でそう問いかけます。
僕は笑顔で
「うん!楽しかった!また来たい!」
と言うと、父はとても満足そうな顔して目を瞑り眠りにつきました。
僕も疲れていたこともあり、直ぐに眠りにつくことができたのですが、

コンッ コンッ コンッ コンッ コンッ

そんな窓を叩くような音によって夜更けに目を覚まされたのです。
その音は父の方、つまり運転席側の窓から聞こえてきます。
目を覚ましたばかりの僕は霞んだ目で音のなる方へ目を向けました。

167: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:37:29 ID:rnO
コンッ コンッ コンッ コンッ コンッ

変わらず鳴り続ける音を見てみると、窓の向こうに何かが立って窓を叩いているのが見えました。
目覚めたばかりで寝ぼけていたのもあって、ソレがなにかはまだわかっていませんでしたが、ソレが人型であることは確かでした。

168: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:37:44 ID:rnO
コンッ コンッ コンッ コンッ コンッ

ずっと自分の隣で物音をたてられているのにも関わらず、父はぐっすりと熟睡しています。

169: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:38:05 ID:rnO
コンッ コンッ コンッ コンッ コンッ

やがてだんだんと視界がはっきりしてきました。
目の前のぼんやりとした人影が少しずつ鮮明になって僕の視界に捉われていきます。
輪郭はどこか女性のようでした。
しかしソレの瞳孔はとても見開かれたており、顔の三分の一を閉めるほど目が大きく、
ソレの口は酷く裂けており、歯が不揃いに並んでいて、
そのくせその髪は艶のある長く美しいものでした。

170: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:38:06 ID:fj3
パッパ...

171: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:38:20 ID:rnO
コンッ コンッ コンッ コンッ コンッ

ソレはずっと父を見ながら窓を叩いています。
まるで、欲しいおもちゃを一心不乱に見る子供のように。

コンッ コンッ コンッ コンッ コンッ

僕は息もすることを忘れその異様な光景を見ていました。
これは夢だ。
そう思い、僕は精一杯その光景から目を背けもう一度眠りにつこうと目を瞑りました。

172: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:38:46 ID:rnO
・・・

すると、突如として音が止みました。
いなくなったのか?
僕はそう思い、運転席の方へと視線を向けました。
そこには気持ちよさそうに眠る父しか存在しませんでした。
僕は安心し、何となくフロントガラスの方を見

173: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:39:05 ID:rnO
バンッッッ!!

僕の方を見ながら満面の笑みを浮かべたソレが張り付いていました。

バンッ!!
バンッ!!
バンッ!!
バンッ!!
バンッ!!

さっきまでよりも強く叩いてるせいで車内は酷く揺れていましたが、それ以上に僕の震えが止まりませんでした。
ソレは狂喜するように笑みを浮かべながら絶えずフロントガラスを叩きつけています。

174: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:39:20 ID:rnO
バンッ!!

父は変わらず寝ています。
そのことが僕を酷く絶望させました。
涙が止まりませんでした。

バンッ!!

僕は金縛りにあったかのように動けず、がたがたと震えながら目の前でガラスを割り入ってこようとするソレを見ていることしか出来ませんでした。

175: ホラー・オカルト情報 19/10/16(水)03:39:36 ID:rnO
そこからは記憶がありません。
当然、ソレがフロントガラスを割って車内に入ってくることは無かったですし、別に朝起きたら車体が謎の手形だらけだった、なんて定番のオチもなかったです。
ただ無事に朝を迎えられたのは間違いありません。
気がついたら寝ていたのです。
あの状況でどうやったら眠りにつけるのか、今でも不思議です。
この話を父に話せませんでした。
話してしまうと父との思い出が全てソレによって厭なものへと塗り替えられる気がしたのです。
もしかしたら、母も似たような経験をしたのかもしれません。
まぁ母はもう他界してしまっているので、今更確かめられませんが。
この話を友人にしたとき、
「それは夢ではないか」
と言われたことがあります。
しかし、僕はそうは思えないのです。
だって、今でも夜起きていると窓からなにかが叩くような音が聞こえてくるのだらから

引用元: 夜中やし怖い話語ろうや

sponsored links